ひろば100時間読書のログ

東京大学書評委員会ひろばが行う「100時間読書」のログです。

ゲーテ詩集(高橋健二訳) 新潮文庫

ゲーテが生涯をかけて作った様々なジャンル(恋愛・社会風刺・自然・人間と神など)の詩が、抜粋されている。
大まかな、時代区分がなされているが、ゲーテの詩が青年期から、晩年へと直線的に発展していったわけではない。生涯にわたって、恋愛をテーマとした詩をゲーテは、書き続けたゲーテは、文体を僅かに変えながらも、その世界観は、『ファウスト』の草稿を手掛けたヴェルテル時代から、その完成に至る老年期まで、引き継がれていた。例えば、ゲーテは、アモルを引き合いに出して、愛を擬人化して書いていた青年期から視座を移動して、愛を人間と人間の関係に媒介として書くようになるが、その自然観や「永遠」という概念に対する考察は、ゲーテが生涯に渡り保持していたものであり、『ファウスト』にも受け継がれている。人間や自然に対する観察と、鋭い洞察がゲーテの世界観の形成に大きく貢献しているのであろう。

Timmy 260P