ひろば100時間読書のログ

東京大学書評委員会ひろばが行う「100時間読書」のログです。

5年振りの更新

皆様初めまして。2020年度書評誌『ひろば』編集長です。

最近は読書百時間もご無沙汰でしたからね...このブログも相当長いこと放置されていました。

 

近々おうち時間を有意義(?)に過ごそうということで読書百時間を復活させないかという機運が高まってきています。お楽しみに。

 

また、この5年間でひろばもだいぶ変わりました。ついに200号を突破しましたし、後は書評を随時発表するブログも始まりました(その代わり今までのjimdoの公式HPは閉鎖されました)。

 

新しいブログはこんな感じです!

hirobaut.blogspot.com

 

是非来てくださいね~

 

それでは今日はこのへんで。

 

2014年100時間読書の記事

 無事に分厚い新歓号も発行されましたので、秋号に掲載された2014年度の100時間読書の記事を公開いたします。

 

no180_reading_100h.pdf

 

 いま読み返してみて気がつきましたが、まだ負債が残っているようなのです。今年も参加して精算しなければならないのかと思う春の日…。夏は我々の前に待ちかまえています。今年はどんな本を読もうか。(うなぎんざ)

ハイネ詩集(片山敏彦訳) 新潮文庫

ハイネの詩の中の言葉を借りて言うならば、ハイネの詩の特徴は、「歓喜に充ちた苦悩、楽しい痛み(P173)」のように、甘美さの中の苦さにあるであろう。この「苦さ」は「甘美さ」と対立するものではなく、むしろ「甘美さ」を引き立て、それ自体が観賞の対象になっている。ハイネは、詩作の至るところで、価値の転倒を意図的に作り出している。墓や死という概念が、最期の審判や、ギリシア神話の題材を介して安楽や幸福と結び付けられている(P42,95)。また、動物たちとの関係の中で「王」にあたる羊飼いが、自らの「王国」の所在を、妃の瞳の中にあると言う(P89)。こうした爽快な価値転倒が、ハイネの文体の独自性ではないだろうか。それは、抑圧的な政治体制下における自由への渇望、すなわちフランス革命の思想的洗礼に基づいて形成されたものであろう。

Timmy P229

ゲーテ詩集(高橋健二訳) 新潮文庫

ゲーテが生涯をかけて作った様々なジャンル(恋愛・社会風刺・自然・人間と神など)の詩が、抜粋されている。
大まかな、時代区分がなされているが、ゲーテの詩が青年期から、晩年へと直線的に発展していったわけではない。生涯にわたって、恋愛をテーマとした詩をゲーテは、書き続けたゲーテは、文体を僅かに変えながらも、その世界観は、『ファウスト』の草稿を手掛けたヴェルテル時代から、その完成に至る老年期まで、引き継がれていた。例えば、ゲーテは、アモルを引き合いに出して、愛を擬人化して書いていた青年期から視座を移動して、愛を人間と人間の関係に媒介として書くようになるが、その自然観や「永遠」という概念に対する考察は、ゲーテが生涯に渡り保持していたものであり、『ファウスト』にも受け継がれている。人間や自然に対する観察と、鋭い洞察がゲーテの世界観の形成に大きく貢献しているのであろう。

Timmy 260P