ひろば100時間読書のログ

東京大学書評委員会ひろばが行う「100時間読書」のログです。

三冊目読了 兼平 7:19

ジョージ・オーウェル『一九八四年』高橋和久訳、ハヤカワepi文庫

・511ページ ・累計ポイント 569+511=1080

「二重思考」。本書を最もよく体現するのは、劇中のキーワードともなるこの言葉しか無かろう。
この書は反共イデオロギーの書であるとか、反監視社会の書であるとか、そんな通俗的な訳知り顔の「解説」にこの本は収まりきらないのだ。本書から全体主義の高らかな勝利を見出すことも、その敗北を確信することもできる。いやそれどころか読後に、読者は全体主義への限りない憎悪と共に、それへの惜しみない愛情を注ぐのではないか?(少なくとも私はそうだ)
無論、現代をソフィスティケートされた全体主義の時代と看做す(ついでに言えば、近頃流行りのスマートフォンツイッターのセットというのは、自らの日常の行動・思考を逐一監視されることを、自ら欲するように仕向ける、「テレスクリーン」などよりも遥かに性質の悪い存在であり得るのだ)ことも、やはり全体主義を斥けた時代と安堵することも、可能であろう。しかし、「ビッグ・ブラザー」が目に見えないからといって(そんなもの「一九八四年」の世界でさえ、システムが生んだ効果にすぎない)、それが居ないと考えるのは臆断に過ぎる。

食欲も眠気も余り無いので、しばらくポイントの消費は避けられそうです。
四冊目は ヘーゲル『歴史哲学講義』(上巻)長谷川宏訳、岩波文庫